「マスカレード・ホテル」相反する職業観の融合が爽やかな気持ちにさせてくれる

この「マスカレード・ホテル」という小説は、刑事がホテル内で起きようとしている殺人事件を潜入捜査で解決するという物語である。

この物語で興味深かったのは、ホテルマンとして潜入捜査する刑事とそこに働くホテルマンの職業観の違いであり、その相反する職業観に反発しつつも、お互いの仕事に対する情熱に感服し、やがては協力関係を築いていくところであろう。

ホテルに潜入捜査することになった新田刑事は、犯人を見つけ出すことが仕事なので、ホテルに来る客を何かにつけて疑ってしまう。新田刑事の教育係を任された山岸尚美は、そんな新田の態度をホテルマンとして許すことができない。一方、どんな無理難題な要求でも受け入れるホテルマンの接客態度が、新田刑事にはなかなか理解できないのである。

このように反発する二人ではあったが、お互いのプロ意識を目の当たりにして、自分たちに欠けている部分を理解するようになっていくのである。やがて新田刑事は、一般人(山岸尚美)に捜査情報を漏らすほど彼女を信頼するようになっていくのである。捜査情報を一般人に漏らすことは、刑事としてご法度であるにも関わらずである。

このように相反する職業観の二人が、やがてはお互いを認め、協力し合うさまが、実に爽快な気分にさせてくれる。仕事には協調性が大事だとよく言われるが、決してそれだけでは計り知れないこともあるのだと実感させられた。建設的な対立は大いにありということである。

>>>小説【マスカレード・ホテル】のあらすじはこちらから

関連記事

コメントは利用できません。