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虚像の道化師

あらすじOutline

7つの怪事件に物理学者・湯川が挑む!

【幻惑す(まどわす)】
『週刊トライ』の記者・里中奈美は、特殊能力を持つ教祖がいるという宗教法人「クアイの会」に取材に来ていた。その取材中に、教祖の連崎至光が「教団の中に裏切り者がいる」と言い出す。裏切り者とされたのは、教団の第五部長であった。「今からその者の魂を浄化する」と言い、連崎が瞑想を始めた。

すると、第五部長は悲鳴をあげ、畳の上をのた打ち回り、息も絶え絶えに苦しみだした。教祖の連崎に超自然的な力があることを見せ付けるためのパフォーマンスで、二人とも演技しているに過ぎないと、記者の里中は冷めた気持ちでこの光景を眺めていた。

しかし、次の瞬間、目を疑うような事態が起こった。その苦しんでいた第五部長が、ついには窓から飛び降りてしまったのだ。ビルの5階から飛び降りたことで、当然に第五部長は死亡していた。演技で自らの命を絶つわけがない・・・里中は教祖の超能力を信じるしかなかった。

念じるだけで人を死に追いやることができるのか?教祖・連崎の超能力の謎に、ガリレオ湯川が挑む!

【心聴る(きこえる)】
病院で暴れた男性を取り押さえようとした草薙刑事が、腹部を刺されて重傷を負った。暴れた男性は加山という名前で、『ペンマックス』という事務機器メーカのサラリーマンだった。加山の供述によると、最近自分だけにしか聞こえない幻聴に悩まされ、診察して貰おうと病院にやってきたが、その病院でも幻聴が聞こえたためにパニックに陥ってしまった、ということであった。この傷害事件は、ノイローゼなどの精神障害による単純な犯行かと思われたが、他に起きていた事件と妙な接点があったため、草薙は二つの事件につながりがあるのではないかと推測した。

その事件とは、加山と同じ職場の部長が、少し前に自宅マンションから飛び降り自殺をした事件であった。その部長も『幻聴』に悩まされていたのではないか、というところが今回の事件と符合していた。『幻聴』に第三者の意図的なものを感じた草薙は、後輩刑事の内海薫を通して、この謎の解明をガリレオ湯川に依頼した。湯川は、他にも幻聴に悩まされている者がその職場にいるのではないかと推測した。そして、その湯川の推測通り、他にも幻聴に悩まされる女性社員がいたのだ。

特定の個人だけに幻聴を聞かせることは可能なのか?幻聴現象に湯川が挑む!

【偽装う(よそおう)】
帝都大准教授の湯川と警視庁捜査一課の草薙は、学生時代のバトミントン部の仲間の結婚式に出席するのために、一緒に地元に帰ることになった。しかし、その結婚式の最中に、その式場近くの別荘地で殺人事件が発生した。有名な演歌の作曲家夫婦が殺害されるという事件であった。発見したのは、その夫婦の娘であった。

土砂崩れが発生して、地元の刑事がすぐに現場に駆けつけられないという事情から、草薙が初動捜査をやることになった。現場の状況から、犯人はまず夫を散弾銃で殺害し、その後に夫人を絞殺したと推測された。しかし湯川は、草薙が撮影した現場の写真を見て、この殺害現場は偽装されていることを見破る。

湯川が見破った偽装とは?そして、その偽装は何のために行われたのか?

【演技る(えんじる)】
劇団の演出家・駒井良介の殺害現場で、神原敦子は偽装工作を施した。それは、携帯電話を利用したアリバイ偽装だった。駒井は、同じ劇団に所属する敦子の元恋人であったが、駒井は別の劇団員の女性・工藤聡美と付き合うようになり、敦子を捨てたのだ。この事実がある限り、警察が敦子に疑いを向けることは間違いない。

しかし、この敦子のアリバイ偽装は、すぐに警察に見破られてしまう。ますます敦子への容疑が深まる中、湯川だけは現場に凶器が残っていなかったことに疑問を持つ。そして、敦子のアリバイ偽装に裏があることを突き止める。

【透視す(みとおす)】
日頃の捜査協力に対する接待で、草薙は湯川を銀座のクラブ『ハーブ』に連れてきた。そこで湯川は、不思議な能力を持つホステスに会う。彼女は、初対面の湯川の名前や職業などをズバリ言い当てたのだ。もちろん、草薙は湯川のことを何ひとつ彼女には教えていない。つまり、彼女には透視能力があるというのだ。

その不思議な能力を持つホステスが殺害された。実は、彼女のこの不思議な能力が事件に大きく関係していた。

湯川の頭脳が、事件の解明だけではなく、すれ違ってしまった家族の心までも救う!

【曲球る(まがる)】
プロ野球のピッチャー・柳沢は、所属する球団から戦力外通告を受けて、現役を引退することを考えていた。彼の妻・妙子も、彼に引退することを勧めていた。しかし、そんな最中に妻の妙子が亡くなってしまった。原因は、強盗殺人に遭ったからであった。

引退を勧めていた妻を失ったことで、現役を続行しようと決意する柳沢。そんな柳沢の投球フォームの矯正に協力したのが、帝都大の湯川だった。湯川のおかげでフォームの改良点は見つかったのだが、柳沢の調子は一向に上向いてこない。湯川は、「精神的な問題で、それは本人が克服するしかない」と言い放つ。柳沢は、現役を続けようとすることが亡くなった妻の意思に反するようで、それが精神的な妨げとなっていたのだ。

しかし湯川は、殺害現場に残されていた物から、柳沢の妻・妙子の本心を解き明かす。彼女の本心を知った柳沢は・・・。

【念波る(おくる)】
青山でアンティークショップを経営する女性・磯谷若葉が、自宅で誰かに襲われ意識不明の重体になるという事件が起こった。この事件をいち早く察知したのは、彼女の双子の妹・春菜だった。彼女たちにはテレパシーみたいなものが存在し、相手に何かが起これば分かるというのだ。しかも、春菜には、若菜を襲った犯人の顔が浮かぶということだ。

超能力という世間一般には公表できないものを捜査の手掛かりにしなければならなくなった警察は、草薙を通じて、テレパシーの科学的解明を帝都大の湯川に依頼することになる。調査をはじめた湯川は、春菜の「私たちは繋がっている」という言葉に着目し、彼女たちのテレパシーの正体を見破ることに・・・その結果、辿り着いた事件の真実とは?

当サイトの管理人より

単行本「虚像の道化師」の全4編と単行本「禁断の魔術」の3篇をまとめて、文庫本「虚像の道化師」として出版し、「禁断の魔術」の残りの1篇は、文庫本「禁断の魔術」として大幅に改稿して出版されているとのことだが、科学的トリックだけを重点に置いた短編集とそれに人間ドラマを加えた長編集に分けて文庫本化されたようですね。

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