加賀恭一郎シリーズ 全作品あらすじ

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テレビドラマや映画で、阿部寛が演じた加賀恭一郎刑事。この原作の小説はシリーズ化されており、探偵ガリレオと並ぶ東野圭吾氏の代表作である。このシリーズは今まで10作品が発売されており、その全作品のあらすじを紹介いたしましょう。

目次

加賀恭一郎シリーズ 1作品目【卒業】のあらすじ

下宿先の自室で一人の女子大生・牧村祥子が死体で発見された。卒業を控えた大学四年の秋の出来事だった。左手首創傷による出血多量が死因とされ、また自室に鍵が掛かって「密室」であったことから、自殺の可能性が高いと思われた。

祥子の日記から自殺の原因を探ろうとする県立R高校時代からの仲間たち。やがて、事件関係者たちの供述から、自殺と断定するには幾つかの矛盾点が見つかった。それで、仲間たちの中には、自殺ではなく他殺ではないかと疑問を持つ者もいた。加賀恭一郎も疑問を持った一人であった。

加賀は祥子の死の真相を探ろうとしたところ、やがて第2の事件が発生する。今度は、金井波香という女性が毒物を飲んで死んでしまうのである。金井波香も仲間の一人であった。

次々と仲間が亡くなる不可解な事件。加賀はこの2つの事件につながりがあると推理し、亡くなった2人の身辺を探っていく。やがて、これらの事件が、最初に祥子が亡くなる1ヶ月前のある出来事が発端であることを突き止める。

刑事になる前の加賀恭一郎が挑む難事件。彼の慧眼が驚愕の真相を暴いていく!

加賀恭一郎シリーズ 2作品目【眠りの森】のあらすじ

有名バレエ団の事務所で殺害事件が発生した。殺されたのは風間利之という男性で、バレエ団との関わりは見出せなかった。加害者であるバレエ団のバレリーナの斎藤葉瑠子は、次のように証言した。
「用事があって事務所に戻ると、強盗犯と鉢合わせてしまった。その強盗犯が襲い掛かってきたので、自分の身を守るために無我夢中でそばにあった花瓶を振り回し、気が付いたらその強盗犯は床に倒れていた」つまり、正当防衛を主張したのだ。

彼女の供述に矛盾点はなかったが、大きな疑問点が残っていた。それは、金目の物がないバレエ団の事務所を、なぜ風間が強盗目的で侵入したのか?ということである。そこで警察は、風間利之とバレエ団の関わりを徹底的に調べることにした。しかし、見つかったのは、風間がこのバレエ団の1年前の公演のチケットを持っていたということと、風間がニューヨークにいた同じ時期に、男性のバレエ団員もニューヨークにいたという事実だけであった。だが、その事実は斎藤葉瑠子が強盗犯を殺害する動機につながるものとはとても考えられなかった。

そのように捜査が停滞していた折、そのバレエ団のバレエ・マスターであり、振付師であり、演出家でもある梶田が舞台での演技指導中に毒物で殺害されてしまう。状況からバレエ団関係者以外の犯行とは考えられなかった。なぜ梶田は殺されなければならなかったのか?また、第一の強盗殺害事件との関係は?

捜査が難航する中、ついに第三の事件が起きてしまった。それは、第一の事件の容疑者である葉瑠子の恋人・柳生講介の殺害未遂事件であった。この複雑に絡み合った事件の真相に、若き敏腕刑事・加賀恭一郎が迫っていく。

加賀恭一郎シリーズ 3作品目【どちらかが彼女を殺した】のあらすじ

愛知県警豊橋署の交通課に勤務する和泉康正に、東京で暮らす妹・園子から電話があった。「明日帰れたら帰る」という電話だったが、結局園子は帰ってこなかった。電話での会話で「お兄ちゃん以外、誰も信じられなくなっちゃった」という言葉を残していたので心配になり、康正は園子が住むマンションを訪ねることにした。
そこで康正は園子の変わり果てた姿を発見することになる。園子の死因は一見自殺のように見えたが、他殺を示唆する痕跡がいくつも残っていた。そこで康正は、殺人捜査の刑事たちをかく乱するためにその痕跡を隠蔽し、自分自身の手で先に犯人を捜し出そうとする。

そして、容疑者は直ぐに2人に絞られた。それは、園子の恋人・佃潤一と園子の親友・弓場佳世子であった。佃潤一と弓場佳世子は男女の仲になっており、園子の存在が邪魔になり殺害したというのが康正が出した結論であった。しかし、佃潤一若しくは弓場佳世子の単独の犯行なのか、それとも二人が共犯でやったことなのか、その答えがなかなか見つからない。
この事件の担当刑事である加賀恭一郎は、他殺の証拠が康正の手によって隠滅されたにも関わらず、わずかな痕跡から事件の真相にどんどん迫っていく。康正より先に真相に到達することによって、康正が復讐を思い留まることを加賀は願ったのである。

加賀恭一郎シリーズ 4作品目【悪意】のあらすじ

人気作家・日高邦彦が自宅で殺害された。第一発見者は、日高の友人の野々口修と日高の妻の理恵であった。野々口は、日高の小学生時代からの友人で、彼もまた絵本作家であった。

犯行現場に赴いた加賀刑事は、この第一発見者の野々口に会って驚く。野々口は、かつて加賀が教師をしていた中学校の同僚教師であったからだ。野々口が今回の事件に関する手記を書いていると聞いた加賀刑事は、その手記を事件の参考に見せてもらうことする。

野々口の手記には、犯人が誰なのかを推測するかのような記事が書かれていたが、加賀刑事は、手記の内容と現状の矛盾点から、野々口こそが犯人ではないかと推理した。加賀刑事の追及に屈服した野々口は、やがて自分の犯行であることを自供するが、なぜかその動機については一切語ろうとはしない。

しかし、捜査を進めていくうちに、野々口が隠そうとした犯行動機につながる事実を、加賀は次々と見つけていく。その犯行動機につながる事実は、野々口に同情すべき内容であった。日高は残虐で冷徹な人物であり、彼のせいで、野々口は自分の夢と愛する人を失ってしまうことになるのだから・・・。

しかし、自らの手で見つけ出した事実にも関わらず、加賀刑事はなぜか釈然としないものを感じていた。そして、それが何かを見つけ出すために、小学生時代からの野々口と日高の過去を知る者から話しを聞き出すことにする。その結果、野々口が日高を殺害しよう決意した“悪意”がどのように生み出されたのか?その真実を知ることになる。

加賀刑事が見い出した野々口の“悪意”の真実とは?

加賀恭一郎シリーズ 5作品目【私が彼を殺した】のあらすじ

脚本家で、「穂高企画」のオーナーである穂高誠と有名女流詩人の神林美和子は結婚式を迎えようとしていた。しかし、その結婚式当日、穂高誠が毒殺されてしまう。その前日に浪岡準子という女性が自宅で服毒自殺を遂げており、同じ毒であったことから、彼女が仕掛けた無理心中だと考えられた。なぜなら彼女は、毒殺された穂高誠の交際相手だったからである。つまり、自分を捨てて他の女性と結婚しようとした穂高に復讐したと考えられたのだ。

しかしその後、浪岡準子が穂高誠に毒を飲ませることが不可能であることが判明した。毒を飲ませることができた容疑者は3名。一人目は、穂高誠の結婚相・神林美和子の兄・貴弘。彼と妹は禁断の関係にあり、妹が他の男性の手に渡ることを不満に思っていた。二人目は、穂高誠の共同経営者・駿河直之。彼は、穂高誠に裏切られ服毒自殺した女性に好意を抱いていた。三人目は、神林美和子の担当編集者・雪笹香織。彼女は、穂高誠と以前交際しており、彼女が神林美和子に穂高誠を紹介したことから、彼女から神林美和子に乗り換えるという裏切りを受けた過去を持っていた。

事件の鍵を握るのは、服毒自殺した女性が残した毒入りカプセルの数とその行方。加賀刑事が探りあてた真相に、読者のあなたはどこまで迫れるか。

加賀恭一郎シリーズ 6作品目【嘘をもうひとつだけ】のあらすじ

「嘘をもうひとつだけ」「冷たい灼熱」「第2の希望」「狂った計算」「友の助言」の5編からなる短編集。

<嘘をもうひとつだけ>
バレエ団の事務員で働く元ダンサー・早川弘子が自宅マンションのバルコニーから転落して、死亡した。事件は、状況から自殺として処理される方向に向かっていた。だが、加賀刑事はこの事件を元プリマバレリーナ・寺西美千代による他殺だと考えていた。加賀刑事が、自白させるために彼女に掛けた罠とは?

<冷たい灼熱>
田沼洋次の自宅で彼の妻・美枝子が殺され、一歳になる息子の裕太が行方不明となった。部屋は荒らされ、通帳などがなくなっていることから、犯人は強盗目的で部屋に侵入、美枝子を殺害し、裕太を連れ去ったかに思われた。だが、加賀刑事は、美枝子殺害と裕太の行方不明の予想外の真実を暴いていく。

<第2の希望>
シングルマザーの楠木真智子の恋人が、真智子の自宅マンションで殺害された。部屋は荒らされ、強盗目的で侵入した犯人に殺害されたと思われた。だが、状況を不信に思った加賀刑事は真智子を追及し、それに耐え切れなくなった真智子は「自分が殺害した。」と自供した。しかし、それも結局、真智子の「第2の希望」にしか過ぎなかった。真智子が隠そうとした真実とは?

<狂った計算>
坂上奈央子の夫・隆正が事故で亡くなった。同じ日、坂上夫妻の自宅を建てた建築士も行方不明になる。この不思議な偶然に疑問を感じた加賀刑事は、この2つの事件に関連があると考え、捜査をする。そして、2つの事件に隠された悲劇が暴かれていく。

<友の助言>
加賀刑事の友人・荻原が交通事故にあった。荻原は、相談事のために加賀刑事に会いに行く途中で、居眠り運転をして交通事故に遭ったのだ。しかし加賀は、荻原が居眠り運転なんかで交通事故を起こすが信じられなかった。そして、加賀は驚くべき真実を掴むことになる。

加賀恭一郎シリーズ 7作品目【赤い指】のあらすじ

前原昭夫は、照明器具メーカーに勤務するサラリーマンだった。そんな彼の元に、妻の八重子から「すぐに帰ってきて欲しい」という電話が掛かってくる。妻の只ならぬ様子に不安を感じた昭夫はすぐに自宅に帰ったが、そこで恐ろしい事実を知らされる。中学生になる息子の直巳が、幼い少女を殺してしまったというのだ。当の本人である直巳は現実逃避で部屋に逃げ込んでしまい、妻の八重子に至っても、少女の死体を庭に運ぶのが精一杯という状態であり、その以外は呆然としているのみであった。

昭夫は、この悪夢のような事実を受け入れて、すぐに警察に通報しようとしたが、八重子は息子の将来を心配するあまり、この事実を隠すことを昭夫に懇願する。その妻の勢いにやがて根負けした昭夫は、事件の隠蔽を決意する。そして、近所の公園の公衆便所の中に少女の死体を遺棄した。

少女の死体は、翌朝すぐに発見された。警察は周りの住宅に聞き込み調査を行い、前原家にも刑事がやって来た。前原家に現れた刑事は、所轄の加賀刑事と本庁捜査一課の松宮だった。やがて、加賀刑事たちは、この事件に前原家が関与している証拠を次々と見つけ出し、この家族を追い詰めていった。この刑事たちの追及から逃れられないと観念した昭夫は、ついに悪魔の決断をする。

息子を守るために昭夫が下した悪魔の決断とは?そして、「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。加賀刑事が放ったこの謎めいた言葉の真相とは?

加賀恭一郎シリーズ 8作品目【新参者】のあらすじ

独り暮らしの45歳の女性・三井峯子が、自宅のマンションで首を絞められて死んでいるのが見つかった。彼女はある理由で最近日本橋に越してきたばかりの“新参者”だった。警視庁捜査一課と日本橋署の合同で始まった捜査だが、日本橋署に着任したばかりの“新参者”刑事・加賀恭一郎は独自の視点で事件を追いかけてゆく。彼の前に立ちはだかる人情という名の謎。その謎を解き明かしたとき、事件の真実が明らかになっていく。以下、各短編のあらすじになります。

<煎餅屋の娘>
三井峯子が殺害されたその日、保険外交員の男性・田倉が彼女の自宅を訪問していたことから容疑者として浮かび上がる。田倉は、犯行時刻には煎餅屋『あまから』で、そこの娘とそのおばあちゃんに会っていたという確固たるアリバイがあった。しかし彼は、誤解を生むようなアリバイを警察で供述をしていた。しかし、その理由には、煎餅屋『あまから』に関わる重大な秘密が関係していた。

<料亭の小僧>
人形町の料理屋『まつ屋』で働く小僧の修平(17歳)は、店の主人の泰治に、ときどき人形焼きを買いに行くように頼まれていた。泰治は修平に、このことを内緒にしておくように約束させていた。修平は、泰治には愛人がいて、その愛人に渡すものだと推測している。ところが、修平の購入した人形焼きが、なぜか三井峯子が殺害された現場で発見された。そして、その人形焼きを購入した人物が容疑者として浮上することになった。容疑者の一人となった修平は、警察の尋問を受けることになるが、泰治にその人形焼を渡したのだとはどうしても言えなかった。自分の疑いが晴れることよりも、主人の泰治との約束を守ることを選択したのだ。殺された女性は泰治の愛人で、殺害したのは泰治なのか?なぜ、殺害現場に修平が購入した人形焼きがあったのか?

<瀬戸物屋の嫁>
殺された三井峯子宅で新しいキッチンバサミが見つかった。そして、彼女に購入を依頼した人物が判明した。それは、瀬戸物屋の嫁・柳沢麻紀であった。しかし麻紀は、そのことを聞き込みに来た刑事に正直に話さなかった。この瀬戸物屋では、嫁の麻紀と姑の鈴江が険悪な状態であり、夫の尚哉は板ばさみで心労が耐えなかった。しかし、このキッチンバサミがきっかけで、尚哉は嫁と姑の真の姿を知ることになる。

<時計屋の犬>
小舟町の時計屋の主人・寺田玄一には娘がいたが、玄一の反対を押し切って結婚したため、勘当状態になっていた。そんな玄一のところに加賀刑事がやってきた。加賀刑事は、ある女性の写真を見せ「6月10日にこの女性と会いませんでしたか?」と尋ねた。実は、殺された三井峯子は、「小舟町の時計屋さんに会った」と殺害された日の書きかけのメールに残していたのだった。玄一は、彼女と会ったことは認めたものの、会った場所について嘘をついた。会った場所を隠した本当の理由が分かった時、玄一の娘に対する本当の想いが明らかになる。

<洋菓子屋の店員>
殺害された三井峯子は、ある洋菓子屋に足しげく通っていた。そして、そこの定員の美雪にいつも優しく接していた。しかし、当の美雪は、なぜこの女性が自分にこんなに優しくしてくれるのか、まったく検討がつかなかった。そんな美雪のところに加賀刑事が現れ、「この女性を知らないですか?」と三井峯子の写真を美雪に見せた。彼女を知っていることを告げると、加賀刑事はなぜか悲しげな顔をした。「なぜ三井峯子が足しげくこの洋菓子屋に通っていたのか?」加賀刑事は、そのあまりにも切ない真実に気付いていたのだった。

<翻訳家の友>
吉岡多美子は、三井峯子の学生時代からの古い友人だった。しかし彼女は、今や深い後悔の念にさいなまれている。なぜなら、峯子が殺された時刻は、本来なら二人が会う予定をしていた時間帯であり、多美子から急に会う時間を1時間遅らせて欲しいと頼んだからだった。そして、峯子はその遅らせた1時間の間に殺害されたのだ。「自分が時間を遅らせなければ、峯子が殺さることはなかったのではないか」と、多美子は自分を責めた。加賀刑事は、そんな多美子をある場所に連れて行き、峯子が彼女に渡そうとしていたある物を見せた。それを見た多美子は、峯子の本当の想いを知り、溢れる涙を抑えることができなかった。

<清掃屋の社長>
峯子には、別れた元夫がいた。彼の名は清瀬直弘。清掃会社の社長だった。彼は、峯子と別れてからすぐ、ホステスをしていた美貌の女性・宮本祐理を秘書にしていた。そのことから、祐理は直弘の愛人ではないのかと疑われた。そして、離婚前からその関係があったことを知った三井峯子が慰謝料を請求しようとしたことからトラブルとなり、峯子を殺害してしまったのではないかという推測がされた。父と祐理の本当の関係を知りたかった弘毅は、祐理に接触し、彼女から真相を聞きだそうとした。すると、彼女の口から思ってもいなかった真実が語られた。

<民芸品屋の客>
民芸品屋『ほおづき屋』に、独楽をずっと眺める男性客がいた。店主の藤山雅代が声を掛けると、その男性は独楽を一つ購入し、「最近独楽を買った人はいますか?」と聞いてきた。雅代が訝る様子を見せたことから、その男性は、「自分は日本橋署の刑事です」と、その身分を明かした。その男性客とは、加賀刑事だったのだ。加賀は、独楽を購入した人物が、この事件の真犯人だと見抜いていたのだ。しかし、その独楽が購入されたのは、事件のあった二日後だった。それにも関わらず、事件後に独楽を購入した者が犯人であると、なぜ加賀刑事は知り得たのか?

<日本橋の刑事>
三井峯子殺害事件を担当した警視庁捜査一課の刑事・上杉博史は、同じ事件を担当する日本橋署の刑事・加賀恭一郎のことがあまり気に喰わなかった。加賀刑事は、いくつもの難事件を解決してきた敏腕刑事と噂されていたが、上杉が見る限り、とてもそのような人物には思えなかったからだ。加賀は、捜査のときでもラフな格好で現れ、熱を入れて捜査をやっているようにはとても思えなかった。しかし、この事件の捜査で浮かび上がった謎を、次々と解明していったのが加賀刑事であることを知って、あの噂はガセではなかったことを確信する。やがて上杉刑事は、「この事件の真相を明らかにできるのはあなたしかいない!」と加賀刑事に迫られることになる。加賀の言葉の真意とは?

加賀恭一郎シリーズ 9作品目【麒麟の翼】のあらすじ

建築部品メーカー「カネセキ金属」製造本部長の青柳武明が日本橋の麒麟像の前で死んだ。彼は、胸を刺され瀕死の状態になりながら、殺害現場から離れたこの日本橋の麒麟像の前までたどり着いたのだ。

彼を刺したと思われる容疑者はすぐに見つかった。しかし、容疑者はパトロール中の警官の姿を見て逃げ出し、道路に飛び出してトラックにはねられ意識不明の重体になっている。

ただ、彼の所持品の財布の中に青柳の免許証があったことから事件との関連を疑われ容疑者となったのだ。財布も被害者のものであったことから金目当ての犯行という線で捜査が行われた。

捜査が進むうちに、容疑者が被害者の会社で働いていた派遣社員の八島冬樹であることが分かった。彼は、勤務中に事故にあったが、会社側の労災隠しのために病院での治療を受けることができず、そのせいで症状が悪化することになる。

さらに、その会社での契約を打ち切られてしまって職まで失うことになった。その職場の最高責任者が被害者の青柳だったのだ。そのことから、恨みによる犯行ではないかという見方が濃厚になった。これ以降、世間ではむしろ青柳とその家族に対する風当たりが強くなっていく。

しかし、加賀刑事だけは、瀕死の状態になりながらも麒麟像にたどり着こうとした青柳の行動から別の真相があるのではないかと感じ取り、独自の捜査を進めていく。やがて、過去に起きたある事件の隠された真実に気付き、今回の事件とつながっていたことを突き止める。

加賀恭一郎シリーズ 10作品目【祈りの幕が下りる時】のあらすじ

東京都葛飾区小菅のアパートで女性の絞殺死体が発見される。被害者は、ハウスクリーニングの会社で働く滋賀県在住の押谷直子だった。殺害現場のアパートの住人・越川睦夫も行方不明になっていた。

この事件の捜査に当たったのが、松宮たち警視庁捜査一課の刑事たちだ。しかし、押谷直子と越川睦夫の接点がまったく見つからず、捜査は難航する。

なぜ、滋賀在住の押谷直子が東京の見ず知らずの男性のアパートで殺されることになったのか?それを知るためには、彼女が東京にやってきた理由を調べる必要があった。

やがて、その理由は明らかになった。彼女は、東京にいる演出家の浅居博美に会いに来たのだ。押谷直子と浅居博美は学生時代の同級生だった。滋賀の老人ホームで博美の母親らしき人を見つけ、それを報告するために浅居博美に会いに来たのだ。しかし、直子が東京に来た理由が分かっても、捜査が進展することはなかった。浅居博美と越川睦夫の間にも接点がなかったからだ。

松宮刑事には、もう一つ気になることがあった。押谷直子が殺害された同じ日に、近くでホームレスの焼死体が見つかったことだ。殺害された日が同じであること、現場が近くであること、さらに、越川睦夫とホームレスの生活に同じ印象を感じることなどから、松宮は、二つのの事件が繋がっているのではないかと感じていたからだ。しかし、それはあくまでも松宮個人の感覚であり、確たる証拠は何もなかった。

捜査が難航する中、松宮は従兄の加賀刑事に会った。それは、事情聴取で浅居博美の事務所に行ったときに加賀が写った写真を見かけ、二人が知り合いであることが分かったからだ。その時松宮は、加賀から重要なアドバイスを貰い、それがきっかけでホームレスの焼死体が越川睦夫であることが判明する。松宮の予想通り、二つの事件は繋がっていたのだ。

御礼を兼ねて加賀に会った松宮は、捜査一課が掴んでいる情報を加賀に教えた。その中には、『越川のアパートにあったカレンダーに、12箇所の橋の名前が書かれていた』という情報もあった。しかし、その情報を聞いて、加賀の顔色は一変する。行方不明になっていた加賀の母親の遺品の中に、それと全く同じ12箇所の橋の名前が書かれたメモがあったからだ。加賀が行方不明の母親の居所を知ったのは、その母親が亡くなったあとだった。母親が世話になっていた人から加賀は母親の遺品を引き取っていた。その遺品の中に例のメモがあったのだ。つまり、行方不明だった加賀の母親と越川睦夫には接点があったということである。

そして、これらの橋が加賀の属する警察署の管轄内にあったことから、今度の事件捜査に加賀も加わることになった。やがて、加賀の慧眼が事件の真相を次々と暴いていく。この事件の裏に隠された悲しい真実とは?

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