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あらすじOutline
ちょっと見は丸顔の美人だが、口も早いし手も早い小学校教師・竹内しのぶ。なぜか彼女の周りでは不可解な事件が発生する。しのぶセンセとその教え子の悪ガキたちが難事件を解決していく笑いと感動の5つの短編集。
【第1篇:しのぶセンセの推理】
しのぶセンセのクラスの生徒・福島友宏の父親が何者かに殺された。しのぶセンセの推理で事件は明らかになるが、そこには悲しい真実があった。この事件でしのぶセンセは、彼女に恋する新藤刑事と出会うことになる。
【第2篇:しのぶセンセと家なき子】
しのぶセンセのクラスの生徒・田中鉄平と原田郁夫が、立て続けに購入したてのゲームソフトを強奪される事件が起きる。強奪したのは彼らと同じぐらいの家出少年だった。愛する生徒たちのために犯人を捕まえようとしのぶセンセは立ち上がるが、その犯人の少年がある殺人事件と結びついていくことになる。
【第3篇:しのぶセンセのお見合い】
ホテルでのご馳走に釣られて、教頭の中田の勧める相手とお見合いをすることになったしのぶセンセ。しかし、そのお見合いの当日、見合い相手・本間が勤める会社の社長が殺されてしまう。自分の恋敵になりそうな新藤刑事は、本間を犯人として疑っている(いや、もはや願望である)。でも、しのぶセンセには、どうしても本間が人を殺めるような人間には見えなかった。
【第4篇:しのぶセンセのクリスマス】
ある女性の死体が風呂場から見つかった。発見したのは彼女の親友だった。その日、彼女たちはお互いの恋人を連れて4人でクリスマスパーティーをやる予定だったのだ。手首の傷は明らかに自殺を装っていたが、ナイフが現場に見つからなかったこと、右利きなのに右手首を切っていたこと、彼女が残したと思われるダイイング・メッセージなどから、自殺を偽装した殺害だと判断された。そして、その殺害に使われたと思われるナイフが、たまたましのぶセンセが買ったクリスマスケーキの中から見つかったのだ。
【第5篇:しのぶセンセを仰げば尊し】
しのぶセンセのクラスの悪ガキ・田中鉄平は、卒業をまじかに控えたある日、風邪で学校を休んで自宅で寝ていた。ドスンというものが落ちる音で目を覚まし外を見ると、庭に誰かが横たわっているのを発見する。よく見ると、それは3階に住む朝倉奈々の母親だった。朝倉奈々は、鉄平と同じ小学校に通う5年生である。奈々の母親は、なぜ自分が落下したのかよく覚えていなかったが、鉄平は誰かに突き落とされたに違いないと思い、犯人探しをしのぶセンセにお願いする。しかし、それはやがて一つの殺人事件へとつながっていくことになる。
当サイトの管理人より
5篇とも殺人事件を扱っているにも関わらず、緊迫感に欠けるところがある。それは、もちろんいい意味でである。しのぶセンセと周りの人たちとの掛け合いが実に面白く、殺人事件の緊迫感を緩和しているからである。主人公のしのぶセンセは、口も手も早いのだが、生徒をとても愛していることがいろんな場面で伝わってくる。これが、単に面白いというだけでなく、感動的に読めてしまう要因になっている。管理人には、「この先生には本当に世話になったな~」と思い出に残るような先生が思い浮かばないが、しのぶセンセみたいな先生だったらきっと懐かしく思い出すことだろう。
また、しのぶセンセに恋する新藤刑事も、この小説では重要なキャラクターである。新藤刑事としのぶセンセのクラスの悪ガキとの交流も見逃せない。悪ガキたちは、新藤刑事の恋を応援しつつも、ちゃっかりその見返りを貰うことも忘れない。そんな彼らのやり取りが実に微笑ましいのである。東野圭吾氏は、この作品を相当楽しみながら描いていたに違いない、そんな風に強く感じるのである。