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あらすじOutline
日常起こりうる交通事故がもたらす人々の運命の急転を活写した連作ミステリー。
【天使の耳】
深夜の交差点で衝突事故が発生した。事故を起こしたのは軽自動車と外車だったが、軽自動車のドライバー・御厨健三だけが死亡してしまった。外車のドライバー・友野和雄と同乗者の畑山瑠美子は、軽自動車の信号無視を主張し、軽自動車の同乗していた健三の妹・奈緒は、外車の信号無視を主張した。しかし、奈緒の目が不自由であったことから、彼女の主張の信憑性が疑問視されることになる。しかし、交通警察官も経験したことがないような驚くべき方法で、奈緒は兄の正当性を証明してみせた。
【分離帯】
トラックがスリップし中央分離帯を超え、対向車線の車と衝突する事故が起こった。トラックの運転手がこの事故で死亡した。県警本部の交通課・世良は、亡くなった運転手の妻を見て驚くことになる。彼女は、高校時代に片想いしていた同級生だった。彼女の力になろうと事故の原因を捜査する世良だったが、ある重要な目撃証言を得ることになる。それは、左側に路上駐車していた外車が、方向指示器を出さすに突然飛び出してきて、それに驚いてトラックが事故を起こしたのではないか、というものであった。そして、この外車の持ち主を見つけ出そうとするのだが・・・。
【危険な若葉】
帰りを急いでいた男の前に走っていた車。それは、若葉マークを付けた女性が運転する車だった。男がその若葉マークの車を必要以上に煽ったところ、その車は事故を起こしてしまう。恐くなった男は、事故を通報せずにその場から逃走した。事故を起こした女性に大したけがはなかったが、記憶障害を引き起こしていた。しかし、この女性の記憶障害には、とんでもない裏があったのだ。
【通りゃんせ】
「いつも誰かの車が止まっている」そんな彼女の言葉を信じて、雄二は駐車禁止の場所に自分の車を駐車した。翌朝、車には当て逃げされたキズが残っていた。犯人は見つからないだろうと諦めていた雄二だったが、何と当て逃げをした犯人から連絡が来た。しかし、この犯人が現れたことがきっかけで、雄二は恐ろしい体験をし、自分がとんでもないことを犯していたことを知ることになる。
【捨てないで】
高速道路走行中の車から投げ捨てられたコーヒーの空き缶。その空き缶が後続車の助手席の女性の目に当たり、彼女は失明することに。だが、空き缶を投げ捨てた張本人の斉藤はそのことを知らない。失明した女性の婚約者は、車の車種と空き缶だけを頼りに犯人を探し出そうとするが、とうとう見つけ出すことはできなかった。しかし、その空き缶が、思わぬ形で斉藤に罰を与えることになる。
【鏡の中で】
地元では有名な東西化学株式会社の陸上部コーチ・中野文貴の運転する車が、交差点で原付バイクと接触事故を起こした。そして、原付バイクの運転手はノーヘルだったため、頭部の打ち所が悪く亡くなってしまうことに。全面的に自分の非を認める中野。だが、現場のスリップ痕から、交通警察官の古川と織田は、中野の供述に疑問を抱きはじめる。
当サイトの管理人より
この小説「天使の耳」は交通警察、つまり交通事故を題材にした小説である。それも、特殊な交通事故ではなく、誰もが経験、若しくは見聞きしたことがある事故を題材にしている。しかし、それが東野圭吾氏の手に掛かれば、恐ろしい結末へと発展する物語となるわけである。