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あらすじOutline
海上自衛隊に収める予定の最新鋭の超大型特殊ヘリコプター「ビックB」は、試験飛行の日を迎えていた。この大型ヘリコプターを開発した綿重工業航空機事業本部の開発者、湯原と山下は、この試験飛行に家族を連れて立ち会おうとしていた。
しかし、その試験飛行を直前に控えていた時に思いもかけなかった事態が発生する。
親が少し目を離した隙に、湯原と山下の息子たちがビッグBが収納されている格納庫に忍び込んだのだが、突然そのビックBが、山下の息子・恵太を載せたまま飛び立ってしまったのだ。
無人操縦でビックBが向かった先は、高速増殖原型炉の原子力発電所・新陽だった。新陽の真上でビックBがホバリング状態に入ったとき、『新陽以外の現在稼働中の原子力発電所をすべて使用不能にしろ。さもなくば、ビックBを新陽に墜落させる』という「天空に蜂」を名乗る犯人からの脅迫文が届いた。
これは、『原子力発電所は何があっても重大な事故にはならない』という原子力発電安全神話を唱える政府に対する挑戦状である。犯人の要求に屈すれば、今後の原子力発電開発に大きな障害となることは明らかであった。しかし、逆に犯人の要求に応じなければ、ビックBは原子力発電所に墜落し、子供の命を犠牲にすることになる。
このかつてない事態に政府はどのような判断を下すのか?高度千メートルの空中に浮かぶヘリコプターの中から、無事に子供を救い出すことができるのか?
行き詰る展開の中、犯人側の『真の狙い』が明らかになっていく・・・。
当サイトの管理人より
この「天空の蜂」が発刊されたのは、1995年のことである。この小説は、あの2011年3月11日に起こった東北大震災の後に読んだので、その緊迫感と切実感は半端ではなかった。また、緊迫感をさらに押し上げたのが、1000メートル上空で行われた子供の救出劇である。作り話と分かっていても、救出劇が成功したときには、おもわず拍手をしたい気持ちにもなった。この子供救出の場面があるのとないのでは、この小説の評価が大きく変わったいたことだろう。
また、ここで描かれていた政府の対応は現実にも十分にありえそうなことなので、小説だとは分かっていても、不快感を拭いきれなかった。