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あらすじOutline
黒い笑いに満ちた傑作が満載の13の短編集
【もうひとつの助走】
内心は賞が欲しくてたまらないが、「賞をもらうために小説を書いているわけではない」と格好をつける作家。「受賞を信じている」と言いながら、心の中では無理だと思っている編集者。レストラン・バーで、文学賞の選考結果を待つ彼らの姿を黒い笑いで描いていく。
【線香花火】
小説灸英新人賞の選考結果を待つ熱海圭介。その熱海に受賞を知らせる連絡が入る。プロの作家としての輝かしい未来を想像して舞い上がる熱海。しかし、受賞を与えたほうの灸英社の熱海に対する印象は・・・。新人賞作家の厳しい現実を黒い笑いで描いていく。
【過去の人】
今年の灸英新人賞の唐傘ザンゲと昨年の灸英新人賞の熱海圭介。同じ新人賞の受賞でありながら、出版社の期待値には雲泥の差があった。そんなことは露知らず、先輩作家として、新人作家の唐傘ザンゲにアドバイスをする熱海圭介。出版業界における新人賞作家の位置づけを黒い笑いで描いていく。
【選考会】
作家人生30年のベテラン作家・寒川。新設された新人賞の選考委員に選出された。とうとう、選ばれる立場から選ぶ立場になったことを喜ぶ寒川。寒川以外にも、友引三郎と轟木花子が選考委員に選出されていたが、実はこの選考委員の選出には、出版社側の黒い思惑があったのだ。
【巨乳妄想症候群】
私は、ある日突然、肉まんやおやじの禿げ頭が「巨乳」に見えてしまう『巨乳妄想症候群』に掛かってしまう。精神科医で友人のタムラの助言のおかげで、肉まんやおやじの禿げ頭が「巨乳」に見えることはなくなったが、今度はすべての女性の胸が「巨乳」に見えるように。私には、むしろこの症状は非常に嬉しいことであった。しかし、やはり現実はそう甘くはなかった・・・。
【インポグラ】
広告プランナーのおれは、大学の薬学部の助教授の立田から相談を受けた。「インポテンツになる薬を偶然に開発したのだが、これが何の役に立つのか考えて欲しい」という相談だった。インポを直す薬なら世間に数多出回っているが、その逆の効能のインポになる薬など欲しがる奴がいるわけがない」と思っていたおれだったが、この薬は大ヒット商品へと変貌していく。そして、その挙句には・・・。
【みえすぎ】
遺伝により超能力を受け継いだ俺。その超能力とは、普通の人には見えない微細な粒子までも見えてしまうというものだった。この超能力を身に付けた俺が見た日常の世界とは?
【モテモテスプレー】
あ 性格の容姿もそれほど悪くないのに、なぜかモテたことがないタカシ。そんなタカシが、いつも女性から言われるのは、「友達でいよう」という言葉だった。そんなタカシに救世主が現れる。人類愛正常化研究所が開発した「モテモテ・スプレー」だ。このスプレーのおかげで、憧れの女性・アユミとのデートを重ねるタカシ。だが、やがて人類愛正常化研究所の黒い思惑をタカシは知ることになる。
【シンデレラ白夜行】
すべての女性の憧れの物語、シンデレラストーリー。でも、そのストーリーを東野圭吾氏が脚色すると・・・何ともブラックな結末へと変貌する。
【ストーカー入門】
恋人の華子から突然別れを切り出された。原因がまったく分からない僕は、少し冷却期間をおいたほうが良いと判断し、しばらく連絡をしなかった。すると、1週間後に彼女から抗議の電話が掛かってきた。それは「なぜストーカーしないの?」というものだった。その日から、僕のストーカー生活が始まったのだが・・・それは、僕の想像をはるかに超えるほど過酷な世界であった。
【臨界家族】
川島哲也の娘・優美は、あるアニメキャラクターにはまっていた。彼の娘だけでなく、娘の友だちも皆はまっており、もはや、このアニメキャラクターのグッズを持っていないと仲間外れになりかねない勢いである。哲也は、「子供に欲しがるものを何でも買い与えるのは良くない。」と抵抗するのだが・・・。
【笑わない男】
売れないお笑い芸人・拓也と慎吾は、営業先の興行主の手違いで高級ホテルに泊まることになった。崖っぷちの拓也と慎吾は、芸を磨くために、鉄火面のように無表情なその高級ホテルのボーイを笑わせることに挑戦する。だが、どんなに仕掛けても、そのボーイは何ひとつ表情を崩すことはなかった。その結果、拓也と慎吾はお笑い芸人をやめることを決意するのだが・・・ホテルを発つ直前に奇跡が起こる。最後の最後にこのボーイの表情を崩させたものとは?
【奇跡の一枚】
不細工な父親と美人な母親の間に生まれた遥香。残念なことに、遥香は父親似だった。そんな遥香が友人との旅行先で撮った写真の中に奇跡の1枚があった。父親似の不細工な遥香の顔が、アイドル顔負けの美人に写っていたのだ。どうしてこの奇跡のような写真が撮れたのか?その謎を遥香の兄・義孝が解き明かした。
当サイトの管理人より
最初の4篇は、作家という職業の世界をブラックな笑いで描いた短篇集である。売れない時代と超売れっ子作家という立場を経験している東野圭吾氏だからこそ、ここまで辛辣に描けるのであろう。同じ内容を売れない作家が描いてしまうと、正直笑えないなと思った。