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あらすじOutline
50年か100年に一人の逸材といわれた天才数学者・石神は、高校の数学教師をしながら不遇の日々を送っていた。そんな独身の石神の生きがいは、自分の住むアパートの隣の部屋にあった。石神は、隣に娘と二人で暮らしている花岡靖子に想いを寄せていたのだ。しかし、容姿にまったく自信のない石神は、その想いを封印していた。彼女が勤める弁当屋さんに毎朝弁当を買いに通うのと、隣室から漏れ聞こえる花岡母娘のかすかな声を聞くことだけを楽しみしていた。そして、それだけで十分に満足だった。
そんな花岡靖子に不幸の影が忍び寄る。復縁を迫る元夫・富樫慎二に居場所を突き止められたことだ。靖子は、富樫とやり直すつもりなどまったくなかった。富樫が復縁を迫る理由は金目当てあることが分かっていたからだ。しかし富樫は、花岡母娘が住む部屋にやってきて、「お前は俺からは逃れられない」とうそぶいた。その言葉を聞いた娘・美里が、富樫の頭を銅製の花瓶で殴りつけた。怒った富樫は、「てめぇ、ぶっ殺してやる」と美里に馬乗りになり殴りつけた。このままでは娘が殺されてしまうと思った靖子は、ホーム炬燵のコードで富樫の首を夢中で絞めた。途中、美里も暴れる富樫を押さえつけた。そして、花岡母娘は、とうとう富樫を殺害してしまう。
石神は、隣から聞こえてきた異常な物音などから、この花岡母娘が人を殺してしまったことを知ることになる。そして、彼女たちを救うためにその天才的な頭脳を駆使して、犯罪の隠蔽工作を企てることにする。
やがて、富樫の死体は発見され、元妻の花岡靖子は重要参考人として、警察から目を付けられることになる。富樫が殺害された日にちは特定されたが、調べれば調べるほど花岡靖子のその日のアリバイは次々と証明されていく。これは、まさに石神が仕組んだ奇想天外なトリックのせいであった。
帝都大准教授の天才物理学者・湯川学は、富樫殺害事件の捜査に当たっていた友人の刑事・草薙から、容疑者の隣に同じ帝都大学出身者がたまたまいることを知る。その名前が石神であることを聞いて、湯川は驚く。石神は、学生時代に、湯川が唯一天才と認めていた友人だったからである。懐かしさから石神を訪ねた湯川であったが、そこで、石神の花岡靖子への想いを知ることになる。そして、石神の事件の関与も疑うことになる。草薙刑事とは別に独自に捜査を進める湯川であったが、石神が草薙刑事にふと漏らした言葉がきっかけで、この事件のすべての真相に気が付く。そして、石神の選択したあまりにも予想外の行動とその想いに苦悩することとなる。
苦悩の果てに湯川が取った苦渋の決断とは・・・
当サイトの管理人より
この「容疑者Xの献身」は、直木賞をはじめとして数々の賞を総なめにした、間違いなく東野圭吾氏の代表作であるが、「本格推理小説と言えるのか?」「献身という題名が相応しいのか?」など、数々の物議を醸し出した作品でもあります。それだけ注目を集めた作品だったということでしょう。