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あらすじOutline
前原昭夫は、照明器具メーカーに勤務するサラリーマンだった。そんな彼の元に、妻の八重子から「すぐに帰ってきて欲しい」という電話が掛かってくる。妻の只ならぬ様子に不安を感じた昭夫はすぐに自宅に帰ったが、そこで恐ろしい事実を知らされる。中学生になる息子の直巳が、幼い少女を殺してしまったというのだ。当の本人である直巳は現実逃避で部屋に逃げ込んでしまい、妻の八重子に至っても、少女の死体を庭に運ぶのが精一杯という状態であり、その以外は呆然としているのみであった。
昭夫は、この悪夢のような事実を受け入れて、すぐに警察に通報しようとしたが、八重子は息子の将来を心配するあまり、この事実を隠すことを昭夫に懇願する。その妻の勢いにやがて根負けした昭夫は、事件の隠蔽を決意する。そして、近所の公園の公衆便所の中に少女の死体を遺棄した。
少女の死体は、翌朝すぐに発見された。警察は周りの住宅に聞き込み調査を行い、前原家にも刑事がやって来た。前原家に現れた刑事は、所轄の加賀刑事と本庁捜査一課の松宮だった。やがて、加賀刑事たちは、この事件に前原家が関与している証拠を次々と見つけ出し、この家族を追い詰めていった。この刑事たちの追及から逃れられないと観念した昭夫は、ついに悪魔の決断をする。
息子を守るために昭夫が下した悪魔の決断とは?そして、「この家には、隠されている真実がある。それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。加賀刑事が放ったこの謎めいた言葉の真相とは?
当サイトの管理人より
この「赤い指」で加賀恭一郎は、犯人家族に対して何とも深い情愛を示します。しかしその加賀が、実の父親が病院で死を迎えようとしているにも関わらず、見舞いに行こうともしません。それは何故なのか?その理由には、加賀の父が下した厳しい決断と親子の深い家族愛があった。「赤い指」は、加賀恭一郎シリーズの第1作品目の「卒業」から描かれていた加賀の複雑な家庭環境の一部が分かる内容でもあったのだ。