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あらすじOutline
9編からなる短編集。
【正月の決意】
達之と康代の夫婦は地元の神社に初詣に行き、その神社の賽銭箱の前で倒れているこの町の町長を発見した。
町長は鈍器のようなもので後頭部を殴られていたようで、警察は事件として調べることなった。
しかし、この事件は意外な結末を迎え、そのことが達之と康代の運命を大きく変えることになる。
【10年目のバレンタインデー】
小説家の峰岸は、10年ぶりに津田知里子に会うことになりウキウキしていた。
10年前に知里子のほうから突然別れを告げられ、それ以来会うことはなかったが、ずっと知里子のことを峰岸は忘れたことがなかった。
そんな元恋人の知里子から連絡があり、それも、バレンタインデーの日に会ってくれというのだから、嬉しくないわけがなかった。
しかし、この再会は、峰岸にとって決して喜ぶべきものではなかった。
【今夜は一人で雛祭り】
三郎は、娘の真穂の結婚相手のことで悩んでいた。真穂の結婚相手の木田修介は、地元の名家のご子息であり、名家なりのしきたりの厳しさが、修介の両親からも醸し出されていた。
そんな名家に嫁げば、真穂はきっと苦労するに違いないと心配だった。
なぜなら、三郎の母も非常に厳しい人であり、妻の加奈子に非常に厳しく接していたのを見てきたからだ。加奈子は、何一つ文句を言わなかったが、きっと大変な苦労をしたに違いない、と三郎は思っていた。
加奈子の性格に似た娘の真穂も、きっと文句も言わずに耐えるに違いないと思うと、娘の将来が不安で仕方がなかった。
ある日、自分の心配を真穂に告げると、真穂は「お父さん、何もわかっていなかったんだね。お母さんは我慢なんてしていなかったよ」と言った。
そして、その根拠は家で飾っていた雛祭りを見れば分かると三郎に告げるのだった。
【君の瞳に乾杯】
場外馬券場にいた内村に声を掛けてきたのは、6年ぶりに会う柳田という大学時代の友人だった。
柳田は、合コンのメンバーが一人欠けたので、内村に参加してほしいと言ってきた。
相手がモデルだと聞いて、内村は喜んで参加することにした。内村の彼女いない歴は8年に達していたからだ。
その合コンで、同じアニメ好きということでモモカという女性と意気投合し、何回かデートを重ねることになった。
モモカは、黒目を大きく見せるカラーコンタクトがよく似あっていて、まるでアニメの美少女キャラクターのようで、内村のもろ好みだった。
しかし、カラーコンタクト外したモモカの顔を見て、内村は愕然とすることになるのだった。
【レンタルベビー】
子育てを疑似体験するために、赤ちゃんのロボットをレンタルできるサービスを利用したエリー。
夫は仕事優先の人間のため、子育ての負担はほとんどエリーひとりにのしかかり、1週間もした頃にはノイローゼになりかけていた。
しかし、時が経つにつれて子育てにも慣れてきて、赤ちゃんロボットに愛情さえ感じるようになってきた。
そして、いよいよレンタル期間の終了の日を迎えるのだが・・・。
【壊れた時計】
闇の周旋屋Aから仕事の依頼を受けた俺は、Aから受け取った鍵で、ある部屋に忍び込んだ。依頼の内容は、白い彫像を盗んでくることと、犯行日時を特定できる手がかりを残しておくことだった。
しかし、帰宅したその部屋の住人と出くわしてしまい、その住人をタックルで倒したが、その衝撃でその住人を殺害してしまう。
その住人は腕時計を持っていたが、その腕時計が壊れてしまっていた。時計の針はちょうど殺害時刻を指してまま止まっており、これが犯行日時を特定できる手がかりを残すことになる、とも俺は思ったのだが・・・。
【サファイアの奇跡】
父を事故で亡くし、母と二人暮らしの未玖の家は裕福ではなかった。金の掛かる遊びはご法度で、そのために放課後も一人でいることが多かった。未玖の願いはお金持ちになることだった。働きづめの母を少しでも楽にさせてあげたかったからだ。
お金持ちになれるようにお願いするために行った神社で、未玖は一匹の猫を見つけた。未玖は、その猫をイナリと名付け、食べ物をあげるために毎日のようにその神社に通うようになった。
だが、ある日突然、未玖の前から猫のイナリは姿を消してしまった。実は、イナリは車に轢かれて亡くなっていたのだった。しかし、このことが、未玖に奇跡を起こすことになろうとは・・・。
【クリスマスミステリ】
7年前、女流脚本家の樅木弥生が脚本を書くドラマに出演することで知名度をあげた黒須は、弥生と男女関係になることで、今では劇団の看板役者の地位を築き上げていた。しかし、他の女優と恋仲になった黒須は、邪魔になった弥生の殺害を決意する。黒須は、テレビドラマの収録終わりに開かれるクリスマスパーティーの前に弥生の家に行き、弥生が飲むワインに毒を入れた。そして、動かなくなった弥生を確認した黒須はクリスマスパーティーの会場へと向かった。だが、そこで黒須が見たのは、クリスマスパーティーに参加する弥生の姿だった。弥生は黒須に、クリスマスパーティーのあとにもう一度家に来るように告げるのだった。
【水晶の数珠】
父の反対を押し切って、ハリウッド俳優を目指して渡米していた度会直樹は、父が末期の癌と知り、父の誕生日に帰国することにした。しかし、実家への帰路の途中で父から電話があり、「やっと馬鹿な夢を諦めて日本に帰って来たか」と言われ、そのことで口論となり、父に会わずにアメリカへ引き返すことになった。その3週間後に、直樹は父の葬式で再び日本を訪れることになったのだが、父は直樹だけへの遺言を残していた。その遺言で度会家に代々伝わる“水晶の数珠”の不思議な力を知った直樹は、なぜあの日自分が実家に着く前に、父が電話を掛けてきて口論になるようなことをわざわざ言ったのか、その驚きの真実を知ることになる。
当サイトの管理人より
なぜ「素敵な日本人」というタイトルを付けるに至ったのか、全部読み終わっても、もうひとつよくわからない。登場人物はすべて日本人には違いないが、むしろ素敵な日本人とは言えない登場人物のほうが多いような気がするし、日本独自の風習を題材にしている物語も「正月の決意」と「今夜は一人で雛祭り」の2編だけのようだし・・・。是非、東野圭吾氏にタイトルの由来をお聞きしたいものである。考えつかないような意味があるのかもしれないし。
タイトルのことはさておき、アマゾンのレビューを見ると、東野圭吾氏の作品は長編より短編を評価する人も多いようだが、管理人はやっぱり長編小説のほうが好きである。