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あらすじOutline
「ブラックショーマン」とは、元マジシャンの神尾武史のこと。彼は、現在「トラップハンド」という名のバーのマスターをしているが、そのバーを主な舞台として繰り広げられる6つの物語。
【トラップハンド】
陣内美菜は、婚活サイトで知り合った清川と一緒に食事をした後、清川の案内で「トラップハンド」というバーに訪れた。
美菜は、その男性のステータスを知るために、いろいろな質問をぶつけたところ、彼の回答は、美菜を十分に満足させるものであった。しかし、「トラップハンド」のマスターの機転で、美菜は最悪の事態を免れることに。美菜が被りそうになった最悪の事態とは?
【リノベの女】
実業家の上松孝吉から莫大な遺産を相続した妻の和美は、その内の2億円相当の高級マンションのリノベーションを文光不動産の建築士として働く神尾真世に依頼しようとしていた。
真世は、和美との打ち合わせ場所として、叔父の武史が経営する「トラップハンド」を利用することにした。
二回目の打ち合わせが終わったあと、「生き別れになっていた兄との再会の場所として、このバーを利用させてもらえないか?」と、和美はマスターの武史に相談した。この兄弟の複雑な事情を察した武史は承諾し、後日、和美の兄と名乗る竹内が「トラップハンド」にやってきた。兄妹の話し合いが進む中、やがて竹内は「お前は妹の和美ではない」と、とんでもないことを言い出す。ブラックショーマン“武史”が暴く、この兄妹の真実とは・・・?
【マボロシの女】
火野柚希は、ジャズバンドのメンバーで、ウッド・ベース奏者の高藤智也と不倫関係にあった。だが、柚希には不倫をしていると感覚があまりなかった。それは、智也と出逢った頃には、智也と妻の涼子はもう既に別居状態であったからだ。
ある日、智也たちのバンドのライブに参加した柚希は、そのライブの終了後、二人がよく利用するバー「トラップハンド」で会う約束をしていた。しかし智也は、彼女との待ち合わせに場所に向かう途中事故に遭い、帰らぬ人となってしまう。智也と妻の離婚が半年後に決まり、彼との未来を心待ちにしていた・・・そんな矢先での悪夢だった。
柚希は、彼の後を追って死のうとまで考えた。しかし、そんな柚希を救ってくれたのは、親友の山本弥生だった。そして、智也の死後約2年が経過した頃、彼との思い出を遠ざけるために避けていた「トラップハンド」に弥生と二人で再び訪れることにした。すると、マスターの武史から、智也の知られざる過去を柚希は聞かされることに・・・。智也の驚くべき過去とは?
【相続人を宿す女】
建築士の真世は、富永夫妻から、突然リフォーム工事の保留を告げられた。
リフォーム物件は、5か月前に交通事故で亡くなった富永夫妻の息子の富永遥人が住んでいたマンションだった。息子の急死で相続したマンションを、夫妻の老後用の住まいにリフォームする工事の依頼を受けていたのだ。
リフォーム工事の保留の原因は、そのマンションには富永夫妻以外の相続人がいる可能性が判明したからだ。その相続人とは、富永遥人の実子だった。
遥人は、妹の文香の紹介で知り合った諸月沙智という女性と結婚していた。8か月前には遥人と沙智は離婚したのだが、遥人との子供をお腹に宿しており、その子供には遥人の遺産を相続する権利があると沙智は主張しているのだ。
真世は、この問題を解決できないかと叔父の武史に相談し、武史はその解決に乗り出したが、単なる沙智の遺産狙いで無かったことを武史は見破る!沙智の真の狙いとは?
【続・リノベの女】
老人ホームのスタッフである石崎直孝は、そのホームに入居する末永久子に「大事な話があるから部屋に来てほしい。」と呼び出された。末永久子の大事な話とは「娘の奈々恵を探して欲しい」というものだった。
だが、奈々恵は既に自殺で亡くなっており、その事実を久子も認識している。しかし、久子は認知症になっていた。これまでも時々“娘は生きている”と言っていたが、認知症である久子の言葉をまともに聞く者はいなかった。
ところが、今回の久子の娘が生きているという話は、認知症からくる発言ではなく、客観的な事実に基づくものであることが分かった。それは、久子の古い知人から、“娘の奈々恵さんが、あるお店に入るのを見た”と書かれた手紙が届いたからからだった。
久子の依頼を受けた石崎は、その知人である山村という女性に会い、そのお店が「トラップハンド」というバーであることを知った。そこで石崎は「トラップハンド」を訪ねることにし、その店のマスターに、久子から預かった奈々恵の写真を見せ、この女性を知らないか、と尋ねた。マスターの武史にとって、この写真の女性はよく知る人物であったが、それを正直に石崎に言えない訳があった。その訳とは?
【査定する女】
真世は、リフォームの依頼を受けた栗塚正章と家具メーカー『バルバロックス』のショールームに訪れたところ、思わぬ人がそこで働いていた。それは、叔父の武史が経営しているバー「トラップハンド」で最近よく会うようになった陣内美奈という女性だった。 美菜は、このショールームのインテリアコンサルタントとして働いていたのだ。栗塚正章と陣内美菜は、お互いに一目惚れしたようで、やがて二人は付き合うことになった。やがて、正章は美菜にプロポーズをするのだが・・・。そこには、真世も知らなかった武史のある企みが隠されていたのだった!武史が仕掛けた企みとは?
当サイトの管理人より
『ブラック・ショーマン』は、本作で2作品目となる。元マジシャンで、現在はバーを経営する武史だが、なぜマジシャンを辞めることなったのかは、2作品目でも明かされていない。東野圭吾氏がこの『ブラック・ショーマン』をシリーズ化するつもりだから、今のところわざと伏せているのでは、と推察する。今後シリーズ化されたなら、この辺の謎もいずれ明かされていくのだろう。武史の姪の真世も主な登場人物であるが、武史の真世の扱い方が、この物語の絶妙なスパイスとなっている。