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あらすじOutline
ホテル・コルテシア東京が文学賞(日本推理小説新人賞)選考会の開催場所として選定されることになった。
当初、文学賞選考会の会場には別の場所が選定されていたが、訳あって、急遽変更されることになったのだ。
通常、文学賞選考会の場所を選定するのは、その文学賞を主宰する出版社だが、ホテル・コルテシア東京を文学賞選考会の場所として使用させてほしいと依頼してきたのは、出版社ではなく、警視庁だった。
警視庁がホテル・コルテシア東京にこの件を依頼してきたのには、2つの理由があった。
一つ目の理由は、ホテル・コルテシアは、過去に何回も重大事件の舞台となり、それらを解決した実績があること。
二つ目の理由は、ホテル・コルテシアで起こったそれらの事件を解決に導いた元捜査一課刑事の新田浩介が、転職し、ホテル・コルテシア東京の保安課長として現在在籍していること。
では、なぜ警視庁が文学賞選考会の場所を指定することになったのか?それは、文学賞受賞の最終候補者のなかに殺人事件の容疑者が入っていたからだった。
容疑者の所在を警視庁は掴めておらず、その容疑者が文学賞を受賞すれば、受賞者として記者会見をすることとなり、その記者会見場に現れると踏んだからだ。
実際、その容疑者が書いた小説が文学賞を受賞する可能性はかなり高いそうで、受賞の記者会見に現れたところを捕らえる腹積もりだ。
この件に主に関わるホテル・コルテシア側の人間は、もちろん、保安課長の新田浩介と過去の事件で新田と共に事件解決に奮闘したフロントクラークの山岸尚美だ。
そんな緊迫する状況の中、新田にとって思いがけない人物が、ホテル・コルテシア東京に宿泊するためにやってきた。その人物は、新田の父の克久だった。克久は国際弁護士で、アメリカ在住であったが、ある人物にこのホテルで会うために来日したらしい。
久々の父親との再会だったが、新田にとってはあまり喜ばしいものではなかった。警視庁が持ち込んだ案件に保安課長として最大限に気を回さなけばならないのに、なぜこのような時に現れたのだ?という、むしろ苦々しい気持ちさえあった。
やがて、文学賞選考会の件も父親の件も、思いがけない方向へと展開していく。
当サイトの管理人より
本作で5作目となるマスカレードシリーズ。
主人公の一人、新田浩介は、今までの警視庁の刑事としてではなく、ホテルの保安課長として登場する。前回の事件でけが人を出したことの責任をとって、警察を退職した。ホテルマンとしての視点で、元刑事としての慧眼を持つ新田の活躍が見どころの一つである。
もう一人の主人公である山岸尚美の活躍が、今までと比べて少なかったように感じたのは、管理人としては残念であった。