「新参者」で分かる加賀恭一郎の刑事としての姿勢

<上記の画像は、TBSサイト「日曜劇場 新参者のページ」より引用

なぜ「新参者」が一番ファンに愛されるのか?

東野圭吾氏の小説で人気のシリーズものと言えば、“ガリレオシリーズ”と“加賀恭一郎シリーズ”。その加賀恭一郎シリーズの中でも最も人気が高いのが、この「新参者」です。それが証拠に、1万人が選んだ東野圭吾作品ベストランキングでも堂々の4位。加賀恭一郎シリーズの中ではトップ。

なぜ一番人気があるのかを考えると、やっぱり加賀刑事の事件捜査に対する想いが一番表現されている作品だからなのだと思う。そして、それはきっと、東野圭吾氏が思い描く理想の刑事像なのではないだろうか。

この小説の中ほどを過ぎた頃(文庫本では253ページ)に、「加賀さん、事件の捜査をしていたんじゃなかったんですか?」と尋ねられた加賀刑事が、それに答えた次のせりふがある。

捜査もしていますよ、もちろん。でも、刑事の仕事はそれだけじゃない。事件によって心が傷つけられた人がいるなら、その人だって被害者だ。そういう被害者を救う手だてを探しだすのも 、刑事の役目です。

加賀刑事の言うところのこの“刑事の役目”は、警察という組織の中では決して高く評価されることではないであろう。それでも、そこに重点を置くのが加賀恭一郎の刑事としての姿勢なのです。そんな姿勢に共感する読者が多いから、この加賀恭一郎シリーズはきっと人気があるのだと思う。

さて、この小説「新参者」は、9つの章からなっているが、それぞれの章が一つの物語になっており、9つの章が合わさって一つの殺人事件の解決につながっていくという連作短編集という構成になっている。各章は、だいたい以下のような話。

  • 第1章は、殺人の容疑が掛かっているのに、顧客の煎餅屋のために自分のアリバイを隠し通した保険外交員の話。
  • 第2章は、主人を殺人容疑から守るために秘密を守り通した口の堅い料亭の小僧の話
  • 第3章は、仲の悪い瀬戸物屋の嫁姑が、実は、お互いに相手のことを気遣っていた話
  • 第4章は、勘当した娘の妊娠を影ながら見守っている時計屋の頑固親父の話
  • 第5章は、息子の嫁と勘違いされて、被害者の女性に影ながら見守られていた洋菓子屋の店員の話
  • 第6章は、自分のせいで殺害されてしまったと自分を責める被害者女性の友人・翻訳家の話
  • 第7章は、被害者女性の元夫・清掃屋の社長の愛人?の話
  • 第8章は、被害者女性殺害の道具として利用された民芸品屋の話
  • 第9章は、女性を殺害した犯人と動機が解明される最終章

もちろん、各章で加賀刑事が重要な役割を担っていたことは言うまでもないこと。

ちなみに、TVドラマになった新参者では、加賀刑事の甥っ子の刑事が登場するのですが、この小説では一切登場していません。その代わり、もうすぐ定年を迎える刑事が登場しており、この刑事の存在が、加賀恭一郎の刑事としての姿勢を伝える重要な役割を担っているのである。

下町の人情満載の作品で、読後感が非常に爽やかな小説でした。

>>>小説【新参者】のあらすじはこちらから

関連記事

コメントは利用できません。

follow us in feedly

RSSを購読する