「時生」過去に戻って伝えたかったこと

<出典:NHKオンライン>

過去に戻った時生の決断とは?

この小説「時生」を読んで、僕は「バック・トゥー・ザ・フューチャー」という映画を思い出した。

息子が過去に戻って、ダメな父親を立ち直らせていくという展開が似ているからだ。しかし、過去に戻った息子の目的となると、まったく違うところにある。

「バック・トゥー・ザ・フューチャー」では、両親が結婚しなければ、自分という存在そのものが無くなってしまうので、その両親の結婚を阻害する原因を除去するために過去に旅立つわけである。

「時生」でも、息子の時生が過去に行って、結果的には両親が結ばれる手助けすることにはなるのだが、そもそもの目的がそこにあったわけではない。時生が過去に戻った目的を理解した時、この小説を涙なくして読むことはできないであろう。

時生は、グレゴリウス症候群という病いを抱えていた。グレゴリウス症候群は遺伝性の病気で、その病気を男児が遺伝すると、若くして発症し、そして、死に至るという病いである。つまり、男児として生まれた場合、かなりの高い確率でこの病気が発症し、若くして死ぬことが宿命づけられていたのである。

時生の母・麗子は、グレゴリウス症候群のキャリアであった。自分が男児を生めば、その子供があの恐ろしい病気を発症することは覚悟しなければならなかった。それでも両親は時生を生むことを選択したのだ。
しかし、そんな宿命を背負うことが分かっていながら生まれた時生は、生まれてきたことを後悔していないだろうか?また、分かっていながら生む選択をした両親を恨んでいなかったのだろうか?これは、母・麗子が長年抱えていた疑問であり、そのことが彼女の罪悪感にもなっていた。そして、その抱えていた疑問を、時生が死を迎えようとしている病院で、夫の拓実に告白した。

妻の悩みを聞いた夫の拓実は、時生が時空を超えて過去の自分のところにやってきたことを、妻にはじめて打ち明けた。そして、その過去の不思議な出来事こそが、母・麗子への長年の疑問に対する息子・時生の答えであったことが明らかになっていくのである。時生が過去に戻ろうとしたこの想いに触れたとき、涙が溢れることを抑えることができなかった。

僕の中では「時生」は、東野圭吾作品の中でもベスト3に入るぐらいの素晴らしい作品である。東野圭吾の小説を読むなら、この小説は決して外して欲しくないと思う。

>>>小説【時生】のあらすじはこちらから

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